狩野 芳伸
研究概要
狩野研究室は、日本語や英語など自然言語をコンピュータで扱う「自然言語処理」の研究をしています。言語は人間の知能の中核であり、人間の知能を探求する科学的な側面と、人間と協調する知的システムを作るという工学的な応用が表裏になる挑戦的な分野です。
人間並みに言葉を操るシステムと人間に近い言語モデル:対話システム、文生成
●より人間に近い言語モデルの構築
近年、超大規模データの機械学習が成果を上げていますが、人間の仕組みからは離れたモデルになり必要なデータ量が多すぎること、ブラックボックスで説明が困難であるなどの課題があります。脳科学・認知科学的により人間に近い言語モデルの構築により、これらの点を打破することが長期的な目標です。
●人間並みに言葉を操る対話システムの実現
人間の言語処理は話し言葉を基盤としており、その処理に必要な要素は多岐にわたると同時に未知のことが非常に多く挑戦的な課題です。話し言葉の分析、対話の戦略、発話の文生成、発話のタイミング、音声認識、音声合成、相槌の生成などが含まれます。下記のプロジェクトや、チャットシステムやキャラクタの自動会話など企業との連携による産業界の現場での実運用を目指しています。
●人狼知能プロジェクト http://www.aiwolf.org/
嘘をつき嘘を見破る会話ゲーム「人狼」をプレイする人工知能を作成するプロジェクトのメンバーとして自動対戦を行う自然言語部門を毎年開催しており、特に会話の理解・生成の自然言語処理部分に挑戦してきたいと考えています。
「AIは『人狼』をプレイできるのか!?カオスな人間vs AI戦も展開されたセッションレポ」inside-games
https://www.inside-games.jp/article/2017/09/05/109557.html
●ソーシャルメディアデータの分析
Twitterに代表されるSNSの書き込みは、省略や不完全な文が多く話し言葉に近い処理の難しいテキストです。主に日本語を対象として、さまざまな個人の特性、意見や行動を表すデータを解析し、有用な推測を行えるようなシステムの構築をしたいと考えています。
●文章の自動生成
より面白く、興味を惹かれるキャッチコピーの自動生成を試みています。言葉の意味や比喩、解釈が課題となる、奥深いテーマです。株式会社電通と研究協力を行っています。
「静大と電通、AIで広告コピーを自動生成」 日本経済新聞朝刊 http://www.nikkei.com/article/DGXLASFB24HBQ_U7A520C1L61000/
「AIコピーライターの衝撃 広告代理店は今後どうなる?」ITMedia
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1806/04/news022.html
また、中日新聞との研究協力で、新聞記事見出しの自動生成などを試みています。
「AI「2本見出し」習得 本紙・静大合同企画で再対決」中日新聞
https://www.chunichi.co.jp/article/47174
自然言語処理の医療応用:自動診断支援
●精神疾患や発達障害の自動診断支援
音声録音やソーシャルメディアのデータの自然言語処理を行い、疾患の自動診断を試みています。慶應義塾大学病院、東京大学、国立情報学研究所、東京医科歯科大学、志學館大学などと共同研究を行っています。
「精神疾患 AIで診断 慶大・静岡大、システム構築へ」日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO19970550U7A810C1L83000/
「自然言語処理による心の病の理解:未病で精神疾患を防ぐ(UNDERPIN)」 科学技術振興機構 CREST
https://www.jst.go.jp/kisoken/jyonetsu/interview/h29/kishimoto.html
●電子カルテの処理
電子カルテ(診療録)や病理所見の処理など、医療テキストの処理を行っており、目標の一つは、医療現場を助けることのできる診断支援システムの構築です。国立病院機構、浜松医科大学、日本病理学会などと共同研究を行っています。
「 静大のカルテ解析 国際大会で首位」中日新聞
http://www.inf.shizuoka.ac.jp/cms/files/s_inf/kano/0100/5Osh51q0.pdf
「医師国家試験に解答する人工知能 正答率40%超」(日本経済新聞 電子版)http://www.nikkei.com/article/DGXMZO91797860W5A910C1000000/
●論文・専門文書のテキストマイニング
脳科学や生物学、医学の英語の論文、薬剤添付文書などを対象に、膨大な文献から薬剤や病気、治療法など新たな発見を導くテキストマイニングを行っています。
自然言語処理の法律・政治応用、質問応答
●法律文書の処理と司法試験の自動解答
法律関連の文書は文が長く複雑なうえ、背後に人間関係や論理構造が仮定されており高度な言語処理を必要とする分野です。そうした法律文書の処理技術のベンチマークとして、国際コンペティションCOLIEEを毎年開催し、我が国の司法試験自動解答に挑戦しています。
「AIで裁判過程分析 静岡大、情報学研などと共同研究」日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38854760S8A211C1L61000/
●議事録の解析と政治学分野への応用
議会の議事録を分析し、政策や政治家の議論プロセスや世論の関係のモデル化を試みています。
●大学入学試験の自動解答(ロボットは東大に入れるか)
大学入試センター試験社会科の自動解答に挑戦していました。さらにシステムを教育分野に応用した質問応答システムとしての展開が考えられます。
「今の人工知能に解ける問題と解けない問題~AIによる東大合格を目指すプロジェクト成果発表会レポート」(インプレス社 PC Watch の記事)http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kyokai/20141119_676462.html
それぞれ、さらに詳細は下記の狩野研究室のページや、教員個人ページを参照してください。
教員/研究室の独自ページ
[日本語ページ]
狩野研究室(一般向け) http://kanolab.net/index.ja.html
教員個人ページ(詳細・専門向け) http://kanolab.net/kano/index.ja.html
[English]
Kano Laboratory(for general) http://kanolab.net/index.en.html
Kano's Personal Page(for experts) http://kanolab.net/kano/index.en.html