遠藤 正之
研究概要
長年の実務経験をもとに、金融情報システムのマネジメントを研究しています。また最近の金融ITでのイノベーションの動きであるFinTech、金融DXについても、経営戦略の視点で研究しています。
金融情報システムは、広範なネットワークに接続する大規模かつ複雑なシステムで、膨大な取引をリアルタイムで処理する必要があり、更に顧客の財産の情報を保有するため、情報セキュリティにも留意する必要があります。
このような特色の金融情報システムを研究することで、一般的な情報システムのマネジメントにも適用できる汎用的な示唆を得ることができると考えています。
リスクマネジメント戦略の6観点「CORE-OQ」
経営レベルで金融情報システムのマネジメントを考える際に、以下の6つのポイント(リスクマネジメント戦略の6観点「CORE-OQ」)が重要と考えています。
1)経営トップのコミットメントと支援(Commitment)、
2)適切な組織体制整備によるITガバナンス強化(「組織体制とITガバナンス」)(Organization)、
3)経営ITリスクの適切な評価と対策の構築(「ITリスクマネジメント」)(IT Risk Management)、
4)経営戦略に合致した業務拡張性及びシステムの一貫性の確保による二重投資の排除(「拡張性一貫性確保」)(Extensibility)、
5)外部関係者の要請とITのケイパビリティの間をつなぐ要件定義最適化(非機能要件を含む)(「要件定義最適化」)(Optimization)、
6)品質重視の仕組構築(Quality)。
参考著書として「金融情報システムのリスクマネジメント」日科技連出版社(2016年7月)があります。
FinTech活用指標12項目
金融機関がFinTechを活用するための指標を提言しています。
【経営戦略】
ⅰ.戦略明確化、ⅱ.イノベーションマインド、ⅲ.イノベーション組織
【IT戦略】
ⅳ.インフラのオープン化、ⅴ.外部との連携活用、ⅵ.開発スピードアップ
【金融情報システム】
ⅶ.API公開、ⅷ.疎結合・部品化、ⅸ.リアルタイム更新
【無形資産、インタンジブルズ】
ⅹ.オープンイノベーション、ⅺ.アジャイル型プロセス、ⅻ.クラウド活用
金融DX(デジタルトランスフォーメーション)
金融DXの動きとして、3点に着目しています。第一に銀行の一部機能が銀行以外のサービスにとって代わられる動き、第二にそもそも銀行を通さない決済の仕組みの広がり、第三に一般の企業が銀行機能を保有する動きです。銀行のビジネスモデルの変化(デジタルバンク等)と銀行以外の取組み(ロボアドバイザー、ソーシャルレンディング、クラウド会計、キャッシュレスサービス)とを関連付けて分析研究しています。参考著書として「金融DX、銀行は生き残れるのか」光文社(2022年6月)があります。参考動画(講演全文抄録)は以下です。https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73655
教員/研究室の独自ページ
金融情報システムの特色
金融情報システムでは、組織要因と経営者要因への対応が特に必要
提言:リスクマネジメント戦略の6観点「CORE-OQ」