伊 夢瑛
研究概要
21世紀に入ってから、インターネットやAI、ビッグデータなどの最先端情報技術が社会へと浸透したことで、人々の暮らしや行動スタイル、また、政府によるガバナンスの手法にも大きな変貌がもたらされました。様々な利便性の享受や社会問題の解決の為に、個人情報が積極的に利活用されるようになり、人々の個人情報は重要な資源とみなされるようになりました。一方で、このような変化を受けて、国民の個人情報やプライバシー権の保護という観点では新しい課題が浮上するようになりました。しかし、関連する法や政策の在り方は、その国ごとに大きく異なり、国際的に統一された基準や概念が存在しないのも事実です。この点に関して法学や比較政治学の観点から各国の個人情報とプライバシー権保護の比較研究を行っています。
政府を対象とした個人情報の保護
近年、各国の政府は社会の諸問題を解決するために、情報技術を介して自国民の個人情報を収集し、利活用するような政策を導入しています。例えば、日本ではマイナンバーを健康保険証や運転免許証と紐づけることで一括で管理しようという動きがみられています。ほかにもイギリスでは街中に監視カメラが設置され、中国では社会信用システムの導入の準備が進められています。このように、政府によるガバナンスのための個人情報の利活用は世界中で見られる動きであり、個人情報の利活用の幅が広がるにつれてより、多種多様なリスクに直面するようになったといえるでしょう。しかし、国によってプライバシーや個人情報の保護に対する価値観は大きく異なり、法律上の違いも見られます。このような状況に対して、どのように私たちは自分の個人情報やプライバシー権を守ることができるのか、法律や政策の面から分析しています。
企業を対象とした個人情報の保護
私たちは、インターネットが発展し、普及した現代において、様々な企業のサービスの恩恵を受け、もはや日常生活がこれらの企業とは切っても切り離せない関係になっています。これは例えば、Google、Apple、Facebook、Amazonといったグローバル企業をはじめとする、実に多岐にわたる企業が含まれており、私たちはこれらの企業のサービスを享受するために、多くの個人情報を提供しています。一方で、様々な問題やリスクにも直面するようになり、この問題は時として国内だけではなく国際的な問題も生じるようになりました。このような状況の中で、私たちはいかに自分の個人情報とプライバシー権を守るのか、法の視点を用いて比較分析しています。