大島 純
研究概要
学習科学は,人間の知性を高めるために,その人にあった学習環境をデザインする研究です.同じ教授方法ですべての学習者の能力をのばすことは困難です.また,教えこむだけでは,学習者が自分で伸びる能力を育てることができません.こういった問題点を考慮しつつ,学習科学では学習者自身が自分の能力を最大限に活用して理解を自発的に獲得していくことを支援できる学習環境の設計のための原則を明らかにしようとしています.
協調文献読解活動のデザイン
Transliteracyと呼ばれる能力が21世紀には必要です.多様で有益な情報源から得られる複数の内容を統合して理解する必要があります.それらの情報は内容が一致しない場合もあります.どのように信頼性を判断し,どう一貫性をもたせるか,この能力を育成するために,他者と協力して複数の文献内容を協調で理解する学習デザインを設計し,その効果を検証しています.
集団知の評価手法の開発
現在組織学習という現象が研究対象として注目を浴びています.一人の優れた人間が成果を上げるのではなく,一般的メンバーが集団で創造的な成果を上げることができる知性のことを意味しています.こうした知性は,日本の企業をはじめ多くの組織でその存在が認められていますが,適切に評価する手法が未だ確立していません.この問題を解決するために,社会ネットワーク分析を用いた新しい評価手法の開発を手がけています.
協調の調整能力育成
チームワークをより生産的に機能させるためには,メンバーひとりひとりが自己の活動や他のメンバーの活動,そしてグループ全体を適切に調整する必要があります.自己調整,共同調整,そして社会的共有調整と呼ばれるメカニズムはここ数年明らかにされ始めた新しい心理学的メカニズムです.これらのメカニズムを学習者がどのように理解して学習活動を展開しているのかを分析し,より適切な学習環境を設計する授業研究を行っています.