情報科学科
情報科学科の教育理念
多様な専門分野で切り拓かれた知識・技術を、革新的なIT技術でコーティングすることによって汎用化し、様々な他分野へ展開可能にする応用学問分野 - それが「情報科学」の本質です。情報科学が、知識と技術、技術とシステム、システムと人、人と企業、企業と世界をつなげていきます! 情報科学科では、IT 技術における広い知識と高い専門性の修得を通して、「世界(ヒト、モノ、コト)をつなぐ基礎力」を育成します。人間や社会と調和した情報システムを創造する能力の研鑽により、文工融合の理念で「世界をつなぐ応用力」を開発します。
カリキュラムの特徴
情報科学の進化は急激で、その領域が爆発的に広がり続けています。情報科学科では、この進化に対応してカリキュラムを発展させており、コンピュータ科学を軸に、 最先端の情報科学も横断的に学ぶことができます。 情報の数理的側面の学習から始め、IT 技術の中核要素(ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、データベース)は少人数グループワークでの実験・演習を通じて理解とスキルを深めます。卒業研究を核とするエッセンシャル科目では、知識の活用能力、批判的・論理的思考力、課題探求力、問題解決力、コミュニケーション能力などの総合的な育成を行い、高度な研究開発にも従事できる応用力の修得を目指します。学生の半数が大学院に進学しています。
体験講義:宮崎佳典 教授「Withコロナ時代のオンライン授業」
講義の一例 ①:知能科学

初回の授業の冒頭で学生たちに「知能とはどんなものだと思いますか?」と問いますと,多くの学生たちが,“問題を解決するために考える能力”,“新しいものを創造する能力”というような回答をします.そして同時に,このような機能をコンピュータ上に実装したものを人工知能だと考えています.しかしそれは,『知能』のごく限られた側面を説明しているに過ぎません.さらに人間の『知能』の中枢を司る脳そのものは主にグリア細胞と神経細胞からなる塊に過ぎず,ここからどうして“私”という意識が生じるのかも未だ分かっていません.つまり,私たちは『知能』というものがどんなものかという概念は持ちつつも,そのシステムの構造や機序(メカニズム)に関しては未だ十分に理解できていないのです.
知能科学の授業は,4〜5名の情報科学科の教員がそれぞれの専門性(認知科学,脳科学,パターン認識,機械学習など)を背景に,『知能』とは何かを半期にわたって学生らに問い続けます.その結果,学生らは履修期間を通して多面的観点から『知能』の意味を各々の興味や関心に基づいて考察し,グループワークを通して他の人と『知能』とは何かを議論したり設計したりする力を身につけていきます.さらに,現在の人工知能研究のさらなる可能性と限界について考える叡智も磨いていくことができる授業内容になっています.(写真左:対面での授業風景,写真右:グループワークの様子)
講義の一例 ②:情報科学実験A

「情報科学実験A」は、情報科学科を代表する専門科目の一つで3年生前期に開講されます(https://ohkilab.github.io/SU-CSexpA/)。ごく当たり前に使用しているWeb システムを実際に構築するだけでなく、性能を測定・評価することで、システム開発の側面からの各種ボトルネック要因等を理解し、対応できる能力の養成を目標としています。3年生までに学んできた「コンピュータネットワーク」、「ネットワークプログラミング」、「オペレーティングシステム」、「データベースシステム論」、「アルゴリズムとデータ構造」等の科目群で習得したはずの知識や技術の定着を意図した実践的実験科目で、チームで実験計画を立て、測定したデータを基に議論し、ボトルネック要因を分析し資料にまとめ成果発表会を実施します。
2021年度は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、教室の許容量50%を満たすよう対面組とオンライン組を組み合わせて交互に入れ替わる形で実施しました。また、演習用機材を1人1セットずつ配布し、MS Teamsを用いたチャットやオンラインミーティング環境の構築(全体&チーム毎)、在宅でも対面と同様な実験を進められるよう工夫しました。以前のように全員が対面で顔をあわせることは少なくなりましたが、オンデマンド型・オンライン型・対面型を組み合わせたハイフレックスな実験実施環境によって、コロナ禍でも効果的かつ充実した実験科目の履修ができたと履修学生らの反応も上々でした。
世界をつなぐ情報科学の5つの技術要素
情報科学によって世界が有機的につなげられ、新たな製品・システム・サービスが次々と実現されていきます。情報科学が、人を、企業を、社会を、そして地球を機能拡張します。
この「世界をつなぐ力」を構成する技術要素が、 ① Science に関する第1 レイヤ、② Technology、 ③ Engineering、④ Design が融合的に相互連携する第2 レイヤ、⑤ Human Science を担う第3 レイヤから成る「情報科学の5 要素」です。
研究テーマは、情報科学の基礎から応用まで、多彩な研究分野をカバーしており、学外の研究機関や企業との共同研究も幅広く実施しています。
情報科学科の教育は、情報科学の5 要素を効果的に吸収できるように設計されており、情報科学を自在に操る人材が世界を変えていきます。文工融合のこの環境で、情報科学の無限の可能性にチャレンジしてください。
先端研究の紹介 ①:市川 淳 助教「身体の動きから科学的に“こころ”の働きをみる」
先端研究の紹介 ②:大木哲史 准教授「騙すAI・騙されるAI」
学生の活躍
総合科学技術研究科情報学専攻 後藤将弥「目標という道しるべ」

「そろそろ成長しないとやばい」。学部3 年の研究配属を決める時期、私は自分が思っていたほど成長できていないことに焦っていました。そこで、自分が成長できる研究室を探して見つけたのが峰野研究室でした。峰野先生の「峰野研では世界初のことを研究開発している」という言葉に惹かれ、ここなら成長できると思い配属を希望しました。
無事、峰野研究室に配属されましたが、配属してからは苦労の連続でした。人間的にも技術的にもまだまだ未熟であった私は、毎日のように先生や先輩から指導を受けていました。しかし、受けた指導を真摯に受け止め人間的に成長することができました。また、研究ではIoT システムによるデータ収集からビッグデータ分析、AI による制御まで一連の技術を学ぶことができました。学生でデータ収集からAI による制御までやらせてもらえたのは非常に貴重な経験で、技術的に大きく成長することができました。その結果、学会での受賞や学長表彰、長年の目標であった企業に内定をいただくことができました。
ここまで諦めず自分の成長のために日々頑張れたのは、やはりなんとしてでも達成したい目標があったからです。「この企業に絶対入る」という揺るぎない目標が、自分は今何をしなければいけないのかを示す道しるべになり、目標だった企業の内定獲得へと導いてくれたのだと思います。
情報学部4年 安藤瑠称「第43回日本神経科学大会 ジュニア研究者ポスター賞受賞報告:義手の使いやすさ向上を目指した心理運動学的基礎研究」

義手の機能性の目覚ましい発展の一方で、義手の使用をやめてしまう人が多いという現状があります。私たちは、この要因のひとつとして、義手を着脱するときの腕の重さ変化が挙げられると考えました。そこで、前腕につけたおもりの変化が、手を伸ばしてものを掴む運動に与える影響を調べたところ、おもりが重くなった場合には手を伸ばす運動が必要以上に高くなってしまう状況が続くことが分かりました。この結果から、腕が重くなった場合には普段と異なる運動制御の方略が用いられることが、義手使用の継続を難しくしてしまう一因になっていることが考えられます。
この問題を克服するために、今後の研究では、今回得られたデータを用いて腕の重さ変化と運動制御の関係を数式化し、どのようにすれば重さ変化に効率よく適応できるかを明らかにしていきたいと思います。
卒業後の進路
情報科学科の研究室出身者の半数以上が、より高度な知識や技能を身につけるため大学院に進学します。大学院修了生を含む卒業生の多くはメーカーやICT(情報通信技術)サービス企業の技術者としての道を進みますが、企業や大学の研究所において引き続き最先端技術の研究・開発に従事する卒業生も少なくありません。
卒業生の声:情報科学科4年 上山彩夏「卒業するにあたって」

4年前の春、私は静岡大学情報学部に入学しました。これから始まる大学生活に期待を寄せていたものの、後期日程での合格であったため、釈然としない思いが少なからずありました。しかし、「後ろ向きに考えていても仕方が無い。後悔のない大学生活にしたい。」と考え、大学での講義や研究活動に全力で取り組んだところ、この4 年間で一生ものの学びと出会いが得られました。入学当初は高校までと全く異なる講義に苦戦していましたが、互いに刺激しあえる学部同期に恵まれ、日々頑張ることが出来ました。その結果、4 年間首席を維持し、学長表彰をいただけました。研究活動では、先が見えない状態に不安を感じることもありましたが、実験と調査を繰り返した結果、国際学会で成果を発表出来ました。そして、継続的な努力で何かを達成できたという経験は私に自信を与えてくれました。
振り返ると、私の成長は支え導いて下さった多くの方があってこそでした。ご指導くださった先生方、共に励まし合った友人たち、支え続けてくれた家族には心から感謝しています。最後に、今は静岡大学に入学を決めて、本当に良かったと感じています。
学生生活:総合科学技術研究科情報学専攻 松村圭貴「初ハッカソンでの入賞経験」

朝日新聞社のハッカソンに参加した経緯は就職活動の一環です。以前会社説明会に参加したこともあり、ご縁あって人事の方からハッカソン参加のお声がかかりました。最初はハッカソン経験がなかったため参加に後ろ向きでしたが、このチャンスを無駄にしたくないという思いから参加しました。
ハッカソンはオンライン開催で14 名の学生が参加しました。2 日間で製作し、最後発表するという流れでした。私は共に参加していた学生1 名とチームを組み2 人で開発しました。「時事に興味ない若い世代でも時事を知る機会を作るアプリ」を目指しゲーム開発しました。開発中はチームのメンバーと遊んでいるような感覚で開発できました。メンバーとサポートしてくださった社員の方のスキルを目の当たりにしながら作業したことは大変刺激になりました。結果、私のチームはベスト企画賞に輝きました。アイデアが斬新だったことと遊びながら作業できたことによる集中力の継続が入賞した要因だと思います。
この経験で、学んできた情報学のスキルが社会で貢献できるという自信を持つことができました。これからも多くのことに挑戦していきたいです。