情報科学科 小暮 悟教授
研究概要
情報のやり取りというものは人が介在して初めて意味を成すものと考えます.例えば人間同士がなにかの情報共有をするためにお互いの知っている状況を伝え合い,それぞれが相手がどこまでわかっていて,どこはわからないかを推測し,それらを解決するためにコミュニケーションを取っています.私は,この,人対人のコミュニケーションに関して,それを,人対コンピュータのコミュニケーションに応用したときにそれを教育に応用できないかと考え,様々な学習支援の方法を考案し,様々な学習支援システムをこれまでに構築しています.
1. プログラミング学習支援
情報科学の分野において(さらに情報科学分野に限らず)ある問題を解決するための道具としてプログラミングを利用することが多いです.大学等の教育機関においては,将来的に問題解決のために効果的にプログラミングができる技術・能力を学ぶために,プログラミングの授業を実施しています.大学学部生のプログラミング初学者の中には教師が提示したプログラムの挙動を自分ではうまくイメージできない人がいます.そのような人たちにプログラムの挙動を理解してもらうための手法として,プログラム挙動の可視化が有効です.実際,多くのプログラミング挙動可視化ツールが存在します.しかしそれらのツールは,システム開発者が決めたルールでしか可視化できないことが多いです.しかし,実際のプログラミング学習の現場では,同じプログラムでも教師が教えたい内容によって可視化方法が変わるという現実があります.そこで,プログラミング挙動可視化システムに対し,教師が可視化の方法を指示できるTEDViT を開発しました.現在,このTEDViT をベースに,プログラミング以外の「何らかの手順を可視化して解説する」科目でも同じ枠組みが使えないか検討しています.現在は,数学の複素数演算,ニュートン法などの数値演算,論理式の簡略化などへの応用を進めています.

プログラム挙動可視化システム TEDViT
2. 第二言語学習支援
第二言語学習においては,「教師」と「学習者」のコミュニケーションによって言語を学習するコミュニカティブ・アプローチ(CA)が取られることが多いです.CAにおいては「多少うまく行かなくても対話を継続して目的を達成する」経験をしたあとで,振り返り時に間違いを指摘する手法が取られます.このCAに対して,CAをベースとしつつ教師が設定した言語形式については対話中に教師が指導モードになり設定した言語形式への注目(フォーカス)を与えるという,フォーカス・オン・フォーム (FoF) という手法もあります.我々の研究室では,FoF に基づいた日本語学習支援システムや,ディクトグロスという学習環境体験システムを構築しています.これらの研究においては,言語学習における表現の体験時によく使われるロールプレイにより設定したシチュエーションの登場人物(ロール)になりきって決められた範囲でセリフを実際に入力していくことで言語学習を行います.本研究においては,「学習者が誤った日本語を入力することがある」ことを前提に,学習者入力の誤り判定を行います.対話の相手は,コンピュータが行いますが,この対話相手は「協調学習者エージェント(CLA)」と言います.CLAは学習者に着目してほしい言語形式やキーワードについて学習者の正誤に沿ってわざと間違えたりします.このように本研究においては「教師が設定したシチュエーションにおいて役割を演じるロールプレイ型の学習支援システム」を構築しています.
3. 学習支援システムにおける音声の利用
第二言語学習における4技能(読む,書く,聞く,話す)を学ぶためには,キーボードとディスプレイだけでは不十分です.聞く を実現するためにはスピーカーがあればいいのですが,話す を実現知るためにはマイクが必要となりますが,入力された音声をどう取り扱うのかという問題が発生します.現状発話された音声を100%の精度で音声認識することはほぼ不可能です.まして第二言語学習において,学習者は言語学習中なためそもそも正しい発音ができない可能性もあります.そこで発音を評価する事ができないか検討し,予め誤りやすい発音を音声認識辞書に追加することで,発話時に誤った発音をしていないか認識できる発音評価システムを作成しました.また,単語のアクセントについても評価できるシステムも構築しています.現在,第二言語学習支援における発音評価,アクセント評価に加えて,文全体のイントネーション評価の枠組みを検討しています.また,プログラミング学習の分野に声を利用する方法がないか検討中です.
共同研究について
1. プログラミング学習支援 および 2. 第二言語学習支援 については,複数教員での共同研究も行っています(合同研究室のWebページはこちら)
自然言語処理・知的教育システム研究室
学習に着目し,学習者を支援するための方法を追求します.
小暮 悟教授
専門分野
プログラミング学習支援・第二言語学習支援・音声を利用した学習支援
主な担当科目
情報学総論,プログラミング入門,プログラミング,アルゴリズムとデータ構造,応用プログラミングC,機械語と計算機械,情報科学実験B,計算言語学,音声情報処理論