情報学部・情報学研究科では、地域社会の発展に寄与することを目的に、地域連携推進室を設置しています。教員や学生が地域課題に取り組む活動を奨励し、地域連携に関する活動の情報収集や教育研究成果の還元、市民団体や事業者などとの連携を促進しています。さらに、公開講座の企画や運営、地域連携に関する相談窓口も提供しています。
室長挨拶
今日の大学には、従来の研究・教育に加え、さまざまな面において地域の拠点として機能する、地域連携の機能が求められています。そうした中、静岡大学としての地域連携に加え、独自の立場から地域連携に取り組むべく、情報学部では平成18(2006)年に情報学部地域連携推進室を設立しました。これまで、学部が立地する静岡県西部地区を中心とした学校や自治体、そして企業等と連携してさまざまな事業を実施してまいりました。
少子高齢化に人口減少が加わった今日、デジタル田園都市国家構想やDX(デジタルトランスフォーメーション)など情報や通信を象徴する“デジタル”を冠した国家・社会の変革が叫ばれています。“デジタル”こそ、我々が築いてきた情報学の知見が生かされる領域であり、情報学部はそこでリーダーシップを発揮すべき立場にあります。しかし一方では、“デジタル”を基盤とする“AI”などの技術は、国際的な懸念を招く事態にもなっています。
これまでにも増して混迷を極める状況において、地域の調和の取れた発展を、“デジタル”の面から微力ながらもお手伝いすることが、地域連携における情報学部の使命です。その達成に向け、地域連携推進室は、地域に開かれた窓口として皆様のご要望やご意見に真摯に耳を傾け、自らのなすべきことを果たし、皆様とともに歩みを進めていきたいと考えています。ぜひ皆様のお声をお聞かせください。どうぞ、よろしくお願いいたします。

地域連携推進室長白井 靖人
地域連携推進室の目的
本室は、平成19年の「学校教育法」改正により大学の目的に新たな使命が付加されたことに伴い、同法83条2項の理念を「地域連携推進室は、情報学部および総合科学技術研究科情報学専攻の教育力、研究力をもとに地域連携を推進することにより、地域社会の発展に寄与することを目的とする」と本室の規程に明示的に盛り込んでいます。
この目的の遂行のために、本室では次のような業務を行っています。
- 教員や学生が行う地域課題に取り組む活動の奨励と支援
- 地域連携に関わる活動の情報収集、および教員・学生への情報提供
- 教育研究成果を地域に還元するための公開講座等の企画と運営
- 市民団体、事業者、地方公共団体等からの地域連携に関わる相談窓口
- 全学の関連組織との相互連携
- その他、地域連携に寄与する事項
活動実績
地域連携推進室2023年度活動報告書.pdf
過去の活動実績
これまでの取り組み
情報学部の地域連携科目
地域コミュニティ論/演習
本科目では、人間集団や社会・文化の成立、歴史と深く関わるコミュニティ概念について、社会科学の理論や方法を踏まえて学んでいます。日常に身近でありながら「遠い」存在にもなっている対象や場(災害、家族、地域社会、祭り、市民協働、NPO、職場)を取り上げ、その具体例を通してコミュニティをいかにデザインするかを考えていきます。その中で、地域コミュニティの実態を学ぶためにフィールドワークを行い、コミュニティの今日的課題を把握していきます。特に、浜松市市民協働センターや浜松まつり会館といった学外のフィールドに赴き、調査や観察を通して情報収集を行なっています。
情報・コミュニティ論/演習
情報・コミュニティ論では、情報という観点からコミュニティを考察することにより、近代以降の社会に現れた様々なコミュニティの理解を深めています。講義では、浜松市の外国人コミュニティや静岡県内の災害復興支援活動などを事例としながら、現代における地域課題の発見・分析に取り組んでいます。情報・コミュニティ演習では、地域連携推進室のアイデアソン・データソンと連携しながら、情報・コミュニティ論で扱った地域課題の分析・解決のためにオープンデータをどのように活用できるか(活用すべきか)について、グループワーク形式で考えています。
家族福祉政策論
本科目では、「福祉」概念を深く理解したうえで、生活者の視点からコミュニティをデザインをしていくために必要な視角と諸知識を学んでいます。毎回の授業では、児童福祉や高齢者福祉といった地域課題に取り組んできた実務家を講師やゲストとして招き、それぞれの経験に基づいた講義をしていただき、地域の福祉課題について学生に考えてもらっています。
フィールドリサーチ
本科目では、「社会調査法」等で学んだ諸技法を活かして、調査を企画・実施できる力を身につけるととともに、調査対象者(協力者)に対する共感性を養うことを目標にしています。学生は、地域調査を実施し、行政、企業、地域・住民組織、NPO等、さまざまな分野で活躍しておられる地域の方々にインタビューを行っていきます。近年は防災・災害対策をテーマに、聖隷浜松病院、静岡県浜松土木事務所、浜松市危機管理課等にご協力いただき、調査を実施しました。
博物館実習
博物館学芸員資格取得のための科目であり、博物館資料の収集、保管、展示、調査研究、その他博物館学芸員の諸業務を実際に体験することで、理解を深めます。学内実習では、絵画、工芸品等の日本美術の作品を用い、その取り扱い、調査研究等について実習します。また学内における小展示を企画、実施します。見学実習では、7か所以上の博物館施設等の見学を実施し、うち2~3か所についてはバックヤードを含めた見学を行います。
インタビュー・スキルズ
この実習では、社会や地域の課題を社会調査を通じて理解し、情報の発信者としての視点や素養と、社会に対して情報発信していくための知識と技術を実践的に学びます。学生は、実社会の問題を取り上げて社会調査を行い、自らの問題意識に基づいて情報を構成し、メッセージを込めたメディア作品を制作していきます。近年は、浜松市内の建築・不動産会社、子どもと家族の支援活動をしている一般社団法人、飲食店、写真館などにインタビュー調査を実施して、ドキュメンタリー映像を作成しました。
知的情報システム開発
本科目の前半では、現在注目されている企業活動におけるデータ分析の活用と、データを活用した情報サービス構築の方法について学んでいます。企業の第一線で活躍されているプロフェッショナルから講話をいただいており、現状の成果、課題、新たな技術や応用の動向などについて知見を得ることができます。また、後半の授業では、ユーザ評価を中核とするデザイン思考型の情報サービス計画手法に関する講述に加えて、地域企業を訪問し、その企業の技術者を交えて運輸サービス提案の発表討論を実施しています。
情報学特別講義Ⅰ
本科目では、企業、行政、メディアなど、特に地域情報化の現場で生じている現象や課題を知り、それに応えるためにどのような形で情報学を深めるべきかについて理解を深めていきます。そのために、情報化の最前線に対応する企業や自治体で働く方々に、それぞれの現場の実態と課題をお話しいいただいています。近年は、静岡県を代表するメディアである静岡新聞・静岡放送の方々を講師としてお招きし、メディアの現場における業務の実態や課題について講義していただき、地域メディアの実態の意義と役割についての理解を深めています。
わが街・浜松の市政
全学教育科目の一つであるこの科目では、浜松市の職員を毎回講師に招き、浜松市の現状や課題、市の施策について学んでいきます。都市計画、産業、育児、防災、環境、多文化共生、行財政改革など、様々な分野において現場に携わっている方々の話を聴くことで、私たちの生活に密接に関わる地方行政の実際について理解を深めることができます。
地域社会と情報
全学教育科目の一つであるこの科目では、地域社会における情報の役割について、浜松市の事例を中心に学んでいます。授業では、企業、政府機関、自治体、社会福祉協議会、NPOといった様々な組織で働く専門家をゲストとしてお招きし、地域社会の中で情報がどのように生まれ、機能して、どう社会に役立っているか、また、様々な情報が社会や地域の人々の生活にどのように影響しているかについて講義していただいています。
研究・教育