Faculty / Laboratory 教員・研究室

情報科学科 尾張 正樹准教授

専門分野 量子コンピュータ科学、量子系の制御と計測
主な担当科目 オートマトンと言語理論、数理論理I、数理論理II、グラフ理論

量子コンピュータ科学

量子ビット

量子コンピュータ

問題点

量子ビットと量子コンピュータ

あらゆる情報は0と1からなるビット列によって符号化することが可能です。そして、情報処理はビット列の変換として表現することができます。この通常の計算機科学の枠組みの中では、計算機科学の理論は媒体となる物理系の性質を考慮に入れなくても良いと思われるかもしれません。事実、情報媒体が十分に大きい物理系である限り、このことは正しいことが知られています。この場合、『十分に大きい』とは、ニュートン力学や電磁気学などに代表される古典物理学で扱えることを意味します。実際、紙、音声、CPU、半導体メモリ、HDD といった情報媒体は古典物理の範囲で扱って問題がありません。

一方、近年の科学技術の発達により、上記の物体より遥かに小さい電子・光子・原子・分子などの物理系を情報の媒体として用いることが可能になってきました。このような系は量子系と呼ばれ、量子力学に支配されています。量子系は状態の重ね合わせが可能であることや、測定により状態が変化することなど、古典系とは本質的に異なる性質を持ちます。例えば、通常の半導体メモリでは小さなキャパシタ(コンデンサー)に電荷が溜まっているかどうかで、ビット値の0と1を表現しています。今、もしこのキャパシタがたった一つの電子しか中に入れることが出来ないほど小さいとしましょう。電子がキャパシタの中にあればビット値は1、なければビット値は0だとしましょう。この場合、電子は量子力学の重ね合わせの原理に従いますので、キャパシタの中に【ある】状態と【ない】状態の重ね合わせの状態を取ることができます。今は電子の【ある】【ない】はビット値を合わせしているので、この重ね合わせ状態は0 と1 のビット値の重ね合わせ状態となります。このような、重ね合わせ状態を取ることのできるビットは量子ビットと呼ばれ、量子ビットを用いた情報処理を行うコンピュータは量子コンピュータと呼ばれます。

量子アルゴリズムと量子情報処理

量子コンピュータは、従来のコンピュータでは実行不能な様々なアルゴリズム(量子アルゴリズム)を実行可能です。これまでに、RSA暗号を破ることが出来る量子素因数分解アルゴリズムのような、従来のアルゴリズムよりも遥かに高速な量子アルゴリズムが多数見つかっています。量子系に特有な性質は、状態の重ね合わせ以外にも存在します。例えば、未知の量子状態が1つだけ与えられた場合には、それがどのような状態であるかを正確に決定することも、その状態を複製することもできません。この性質の応用として、量子状態に情報を符号化することで安全な通信を行うことができます。この種の通信プロトコルは量子暗号と呼ばれます。このように量子力学に特有の性質を利用することで、従来のIT技術では実現不能な様々な情報処理を実現が可能です。このような情報処理は量子情報処理と呼ばれています。

量子コンピュータ開発におけるノイズ問題

量子コンピュータの開発は2010年前後に起きた超電導回路の設計手法の改良などにより劇的に進展しました。特に、2010年代の半ば以降には、IBM、Googleを始めとする多数の巨大企業が本気で開発に乗り出したことにより、2020年代中頃の現在では数百量子ビットのサイズの量子コンピュータが実現しています。このような開発の進展を鑑みると、量子素因数アルゴリズムのような代表的な量子アルゴリズムは数年以内に実用化すると思われるかもしれません。しかし、残念ながらそのような事はありません。その理由は、現在の量子コンピュータは少量ではあるがノイズを含んでいるからです。このノイズの問題の究極的な解決は誤り訂正符号の量子コンピュータへの適応であると考えられています。しかし、この手法はデバイスに含まれるノイズの量が一定以下でないと十分な効果をあらわさず、量子コンピュータにおけるノイズの問題は、現在、まだその解決に向けて、ソフトウェア研究とハードウェア研究の双方から、様々な提案がなされている最中です。

量子情報研究室

量子コンピュータの実用化を目指して基礎研究に邁進!!!

本研究室では、主として数理解析と数値シミュレーションを用いて、量子コンピュータ科学における学術情報を蓄積すると共に、量子情報処理の新技術の開発を行い、又、これらの情報や技術を社会に発信することを目標としています。特に、上記のような量子コンピュータ開発の現状を鑑み、本研究室では、ノイズを含まない量子コンピュータを前提としたアルゴリズム等の研究のみならず、現在、存在するようなノイズを含んだ中規模量子コンピュータ上でも動作するアルゴリズムの研究や、更には量子コンピュータのハードウェアやアーキテクチャの開発への寄与を目指して、量子系の制御法や計測法の研究なども行っています。
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尾張正樹の自画像

尾張 正樹准教授

専門分野

量子コンピュータ科学、量子系の制御と計測

主な担当科目

オートマトンと言語理論、数理論理I、数理論理II、グラフ理論

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